人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Pendenza20%「飲み喰らい魔ー日記」 第2部

scalatore.exblog.jp
ブログトップ
2006年 04月 14日

イタリア(トリノ限定)の自転車事情

毎週秋葉山を登り,浜名湖闇練のペースもあがり,テレビでロードレースの放送が始まり,ようやくシーズンインの気持ちが盛り上がりつつある今日この頃.
たまには自転車の話題でも.(というか,これはあくまでも自転車ブログだ)

毎年ツールドフランスなんかをテレビで見ていると,解説者がよく“日本人の男なら誰でも子供の頃,親とキャッチボールしたことがあるように,イタリアでは当たり前のようにロードレーサーに乗る”みたいなことを言うが,果たしてそうだろうか?
モニカの幼馴染や友達,親戚,知り合いで“ロードレーサーに乗っている”,または“乗っていた”,どころか“持っていた”なんて話は聞いたことがない.
マウンテンバイクを持っている友達は数人いるが,練習したり,ましてレースに出るわけでもない.
確かに自転車ジャージに身を包んだ自転車乗りはたまに見かけるが,むしろ浜松の方がたくさんの自転車乗りを見る.
もちろん自分が自転車乗りが通るコースを走っているから,ってのはあるけど,それにしてもイタリア人の自転車熱がそれほど高いとは思わない.
やはりイタリア人といえばサッカーだろう.どんな小さな村へ行っても必ずサッカー場があって,トリノでもどこでもサッカーをしてる人を見ない日は一日もないほどだ.
日本人の男が誰でも一度はグローブを買ってもらったことがあるのと比較できるのはやはりサッカーボールだろう.これがない家ってのはないんじゃないだろうか.
テレビをつければもちろんサッカーだらけ.バールでの話題ももちろんまずは何はともあれサッカー(&政治)だろう.
ただし,自転車解説者が言う“イタリア”がベルガモ辺りだけを指すのなら話は別だ.あの地域には自転車メーカーや工房が集中しているようだし,トップ選手もトレーニングに集まる場所なのだ.
そんな地域に限って言えば,“誰でもロードレーサーに乗り,ジロディイタリアに熱狂する”という話もわからないではない.
しかし,あくまでも断言するが,イタリア全土の国民的スポーツはサッカー以外ありえない.
その次に来るのが,トリノならスキーだったり,ロンバルディアやトスカーナでは自転車ロードレースだったりするんだろう.
南はきっとサッカー以外ありえないと思うが...
とはいえ,自転車がマイナーか,というと決してそうではない.むしろメジャーなスポーツであることは間違いない.
モニカでさえも,チポッリーニとパンターニの名前くらいは知っている.広くスポーツ好きで,何よりも新聞好きなイタリア人.何事につけ有名人の名前はちゃんと把握しているのだ.
自転車に乗らずとも,ジロディイタリアの放送も観ていたり,男なら大概ちゃんと自転車レースの中身もよく知っている.
レースはおろか,ロードレーサーに跨ったことすらないくせに結構鋭い指摘をしたりする.
イタリア人は何かにつけて“総評論家”みたいなとこがあるからな.何しろ話題には事欠かず,バールであれこれと盛り上がっているのだ.

まあ,イタリア人がサッカーボールを蹴ってようが,ロードレーサーに乗っていようがそんなことはどうでもいいが,
いざ向こうで自分が自転車に乗ろうとすると問題がたくさんある.
今回はなんだかだらけていて,天気はまあまあよかったわりには一度も自転車に乗らなかった.自転車と言ってもマウンテンバイクモドキのボロ自転車.
一応ビアンキと書いてあるが,そこらのホームセンターで売ってるような自転車と同等なモノだ.
10年前に散歩用に買って置いたままだが,2年前に行ったときに極寒の濃霧の中,トリノ-アルバ間約100kmを3度ほど走った.
まず,自転車で長距離を走るのに一番大事な水だが,コンビニはおろか,自動販売機というものが存在しない.何でも,“自販機なんか置いとくと自販機さら丸ごと持っていかれるから”らしい...(真偽のほどは定かではないがかなり現実的だ.ドイツの自販機にはぶっとい鎖がかけられていた)
もちろんバールとかスーパーへ入れば水でもジュースでも買えるが,郊外ではそれすらも見つからない.
そして,女性には大問題なトイレだが,これも日本のようにあちこちに公衆トイレがあるわけではなく,やはりバールにでも駆け込む以外ない.
市街地の公園にはトイレもあるが,郊外に出ればやはりバールが頼りか.それに,市街地の公園に自転車を置いてトイレに入ればその隙に自転車が“消える”ことは日常茶飯事.

とはいえ,やはり自転車ロードレースの歴史は長く,日本は足元にも及ばず,実際には自転車愛好家の数も相当なはずだ.
イタリア(トリノ限定)の自転車事情_b0047100_2315390.jpg
(写真をクリックすると大きくなるよ)

最近日本でも流行りだしているグランフォンドも本場イタリアでは盛んに開催されているし,何千人ものホビーレーサーが集まって盛大に行われている.(ただ,ヒルクライムなど小さなホビーレースは今や日本の方数が多いような気がする)
そしてなんと言ってもイタリアでは自転車乗りに対する理解もやはり深く,自動車からクラクションを鳴らされたり,まして幅寄せされることもなく,平然と車道を走れる.というか歩道を走る自転車を見たことがない.やはり立派な“車両”として地位が認められているのだろう.
ただし,“安全か?”というと,信号無視する車は無数にいるし,車線なんてあってないようなもの.市街地はまさにサーキットなのだ.
そんな中を走り抜けるにはそれなりの覚悟と,イタリアの交通をよく知ることが大事だ.
イタリア(トリノ限定)の自転車事情_b0047100_2335240.jpg


そしてなによりも,まずは“自転車を買う”というところへ話を戻すと,これが困ったものなのだ.
日本のように立派なショップがあちこちにある,なんてことはなく.トリノのような大都市でも自転車屋探しに苦労する.
しかもあるのは大手のスポーツ店やホームセンターだったりして,イタリアメーカーのロードレーサーすらまともに置いてない.
小さな自転車屋さんはあることはあるが,これがまた小さく,在庫してあるのはやはり安価なものばかり.
基本的にイタリアで買い物をすると言うことは店の人とコミュニケーションをとらないことには始まらないことが多い.
自転車なんかは“カタログを見て相談し,発注して組上げてもらう”というのが普通なんだろうか?その辺は詳しい人がいなかったので知らない.
もしかしたら,ロードレーサーに乗るような人はまず地域やショップのクラブに入って,クラブの母体のショップで買い揃えるのかもしれない.
確かに普通の自転車好きはマウンテンバイクを買うようだし,大手スポーツ店にならぶのもほとんどマウンテンバイク.
イタリア(トリノ限定)の自転車事情_b0047100_2324073.jpg

走っているのを見かけても,ロードレーサーは数人で走り,単独なのはマウンテンバイクか,ランドナーっぽいやつだったりしたような気がする.

それから,ウエアなんてひどいものだ.大体俺の自転車ウエアなんてほとんどイタリアメーカーなのに,どこへ行っても売ってない.
大きなスポーツ店でそれなりにウエアが置いてあったとしても,ブリコがそこそこある以外は全くもってまばらな品揃え.
Naliniは?Sportfulは?Castelliは?Santiniは?.....
日本で当たり前に売っているいわゆるレプリカジャージなんて見たことがない.
じゃあ通販は,と言うとこれもひどいもので,イタリアのビアンキのサイトのショップで何度か買ったことがあるが,トリノのうちに届くまで2週間はかかる.
そうだ,宅急便も日本のように発達していないのだ.
それに,ウエアも自転車も何故か日本で買う方がずっと安かったりする.イタリアのメーカーでmade in Italyと書いてあるのにだ.
ということは,やはり日本での方が断然数が売れると言うことなんだろう.

しかし,これは全てトリノでの話.自転車が盛んな地域だと全く違うかもしれないし,ミラノみたいな大都市なら大きなショップもあるのかもしれない.
でも,トリノだって人口90万の都市だし,ご存知の通りオリンピックが開催されたばかりのそれなりの大都市だ.
じゃあスキー用品なら何でも揃うか,というとこれがまたないのだ...東京の神田みたいに,スキーショップが立ち並ぶなんてことはないし,スキーもやはり安くない.
日本てのは本当に便利だ.全国どこにいたって欲しいものが金さえ出せば何でも手に入るし,うちまで届けてもらえる.
そういえば,トリノに最近できたばかりのナイキショップにも行ったが,これもやはり日本の方が種類も豊富で安い.全くもって不思議だ.
イタリアでデザインされイタリアで生産される商品が日本の方が数が多く値段も安いなんて...

そんなことを考えると,“日本に住んでてよかったなぁ”とつくづく思える.それまではイタリアへ帰りたくて仕方なかったのに,
今では夏休みやゴールデンウィークにイタリアへ行くよりも日本で自転車に乗ってた方がいい,とまで思ってしまうのだ.
とはいえやはりいつの日か,トリノからサンレモや,トスカーナをビアンキで走りまくったり,時にはのんびりリュックにカメラ詰めて自転車で旅してみたいと強く願う.
そんな旅の記録をブログに載せれる日は来るのだろうか...

by taka-taca | 2006-04-14 23:06 | ITALIA


<< 魚イタリアンディナー      ローラー練 >>